バイリンガルの子育てで失敗を回避したいなら向き合うべき6つのこと【前編】

バイリンガルの子育てで失敗が怖くて一歩を踏み出せないというママとパパは、子供の人生のことを考え慎重になっていると思います。

実際にバイリンガルの子育てを実践中で、英語学・言語学・教育学・教育心理学を大学院までで学んだ筆者がバイリンガル子育ての失敗を回避するための注意点をまとめてみました。

※記事のボリュームが大きくなってしまったの2回に分けてお送りします。

バイリンガルの子育てで失敗を回避するためにすべきこと

バイリンガルの子育てで失敗を回避するためにすべきことは以下の6つです。

  • 無言期の理解
  • 習慣化と継続
  • 英語を勉強だと思わない
  • 英語と日本語の切り分け
  • 英語による思考の習得
  • インプットとアウトプット環境

それぞれを詳しく説明していきます。

無言期の理解

まず、言語習得のステップの初めに「サイレント・ピリオド」という期間があることをご存知でしょうか。

いわゆる無言期なのですが、赤ちゃんは初めから話せるわけではなくママやパパの言葉がけを聞いて少しずつ言葉を覚えていきますよね。

その無言で聴きに徹している時期のことをサイレント・ピリオドと言います。

母国語でも平均して9ヶ月~1年くらいは無言期があり、その後も2歳児くらいまで2語文、3語文程度だと言われています。

なので2~3年はインプットがメインの生活をする必要があることが分かっています。

これは子供だけでなく大人にも同じことがいえます。

バイリンガル教育をしようとして、赤ちゃんに英語で話しかけることが難しいと感じたとします。

その原因は親が過ごした無言期が足りていないことが原因だと考えられます。

私たち大人は、母国語を既に習得しており、英語でアウトプットするにも母国語を通して思考したり発信しようとします。

このせいで英語が話せない、分からないという状態に陥ってしまっているのです。

これは第二言語として英語を習得している私たちだからこその問題です。

英語で考えて英語を話すといったネイティブのような話し方ではないので、仕方がありません。

ここまで読むと、「あ、バイリンガルの子育てはムリゲーか」と思いがちかもしれませんが、そうではありません。

習慣化と継続

海外の映画を見ていると全く聞き取れないという経験をしたことがある私たちですが、字幕を見てみると意外と簡単な表現や単語が使われていたということはよくあります。

大切なことは、幼児が理解できる程度の簡単な表現を何度も聴いて、意味を体験的に理解していくことです。

これには時間がかかります。

なので無言期と言うものがあるわけですが、「分からない」「できない」という気持ちから途中で断念してしまいがちです。

また、「意味を体験的に理解していく」と書きましたが、第二言語として英語を習得している私たち大人はつい日本語で英語を考えてしまいます。

なので、バイリンガル教育を受ける幼児もバイリンガル教育をする大人も、カンタンな表現を英語でそのまま吸収していく姿勢が必要だと考えます。

「子供と一緒に学んでいくぞ」というくらいの気持ちで、長期的な視点でバイリンガル子育てをみるべきです。

英語を勉強だと思わない

習慣化や継続を意識していると、英語を学習や勉強だと思った瞬間に学習が苦痛になります。

しかしながら、そもそも言語は学問ではなくコミュニケーションのツール(道具)にすぎません。

間違っていても正してもらいながら修正できるし、コミュニケーションが成立せず失敗してもそれ自体が経験となりコミュニケーションスキルの成長につながります。

日本では、英語を授業で学び受験のために英語を学習してきた流れがあります。

そのためか、知識の追求だけがどんどん高度化していき知識のみが求められてきた時代があります。

本来の言語習得は、子供が言い方を間違えながらも親に正してもらいながらコミュニケーションの中で習得していくものです。

親にとっては、ネイティブでない自分が子供のバイリンガル学習における間違いを正せるのか?という不安を抱きがちかもしれません。

しかし、気付いた時に単語レベルでもいいので少しずつ言い直してあげることをおすすめします。

間違いに気づくこと、間違いを修正することもコミュニケーションの1つだと考えるべきだからです。

バイリンガルの子育てにおいて、子供が興味をもって習得しようとしている英語を学習や勉強の類にしてはいけません。

英語と日本語の切り分け

言語習得をする際、なるべく英語と日本語を切り分けて使うようにすべきです。

理由は明確で、赤ちゃん~幼児にとって言語は自然なものであり、「これは日本語」「こっちは英語」といった分類をしないからです。

そのため、「僕は電車にライドするのが好き」のように英語と日本語が混じった言葉を使うようになるリスクがあります。

言語が混在する言葉は、何より聞き手の困惑を生み出します。

言語を使い分ける方法は、カンタンに作ることが可能です。

心理学の分野で行動心理学という学問がありますが、そこで筆者は「アンカリング」という方法を学びました。

アンカリングとは「条件付け」のことで、何か行動をする前の合図をつくることを指します。

例をあげれば、ラグビーの五郎丸選手がゴールキックをする前におこなうポーズや元プロ野球選手のイチローさんが打席でおこなうあのポーズです。

いわゆるルーティンを作るということなのですが、言語の切り替えにもアンカリングは有効です。

例えば、英語を話すときは「Hello.」や「Hi, there.」「Hi, sweety.」という言葉からスタートするなど。

日本語であれば、「ねぇねぇ」といった呼びかけや「ちゃん」や「君」といった名前につける敬称でアンカリングするのもよいでしょう。

英語による思考の習得

アンカリングによる英語と日本語の切り分けをしても、その後の会話が続かないという問題に直面する方は多いのではないでしょうか。

特に、親が英語を話せないからという理由でバイリンガルの子育てに注力している家庭では親子での英会話が成立しないことがバイリンガル教育をする際に1つの壁としてあらわれます。

これは、赤ちゃんが相手であれば思考力が育っていないこと、幼児であれば無言期でありインプットメインの状態であることが原因の1つです。

また、ママやパパが英語で話しかけようとする際に脳内で「日本語→英語」の変換を行っていることもスムーズな英会話が実現しない原因の1つです。

英語による思考を習得することはとても難しいように思いますが、これは長期的に見てゆっくりと習得していく必要があります。

そのため、子供が0歳~2歳であれば親子で習得していくという意識を持つべきです。

最初はDVDや絵本で知った表現をマネするだけでいいですし、ポイントとしてはいちいち日本語に変換しないでそのままの英語を楽しみながらマネすることです。

筆者の体験談で言えば、2年ほどバイリンガル教育を受けている我が子は、文字も文法も単語も分からない状態でDVDや絵本、動画で学んだフレーズを少しずつアウトプットするようになってきています。

とはいえ、子供の英語学習のために大人は単語の意味を日本語で調べて理解したうえで使うこともあるでしょう。(筆者も同じです)

それでも焦らず、日本語を抜きにして英語を吸収しマネして使うというだけで英語は習得できるので信じて行動してみてください。

ここまで断言する根拠は、3歳児の母国語の発達にあります。

3歳児はそれまでの3年間で文法や単語、文字の読み書きをせずとも会話が成立する程度のレベルに到達しています。

このことから、英語による思考の習得も他の言語を通さず3年間マネ遊びをしていれば可能だと考えたわけです。

これは英語に全く興味のなかった筆者のパートナーがバイリンガル教育を始めて1年10ヶ月くらいで「日本語で考えなくても英語のフレーズが出てくることがある」という感想を述べており、このことからも確信しています。

インプットとアウトプット環境

インプット環境は教材を買うことで時間も探す労力も大幅にカットして整えることができます。

教材購入はいわゆる投資だと思っていますが、買わなくてもYouTubeやAmazon primeなど動画サービスを使ってインプットする環境を作ることは十分に可能です。

筆者の家庭では、1日1~2時間は英語のDVDやCDを見聞きしています。

じっくり見聞きするのではなく、聞き流しでもOKです。

午前中1時間、午後~夜で2~3時間という時もありますが、そういった時はほぼ流しているだけといった感じです。

それでも、ふと耳に入ってきて意味を感じ取る瞬間があるので、聞き流しでも決してムダではありません。

対して難しいのがアウトプットの環境を整えることだと思います。

これは、ちょっとした言葉がけでも解消できます。

例えば、絵本や絵カードを見ながら「An apple.」とか「a police car.」とか単語レベルで投げかけるだけでもいいです。

親がそのように言葉がけ(アウトプット)することで、子供もオウム返しでマネしてアウトプットすることがあります。

筆者の経験上、アウトプットは歌のフレーズから発生することが多いと感じています。

「Touch your head.」のような歌詞にあるフレーズで遊びながら単語とフレーズを体得していく感じです。

パパママが慣れてきて、日本語を通さずフレーズを使えるようになってきたら、次のステップに移りましょう。

「Touch your 〇〇. 」の「〇〇」を変えていくのです。

すると子供が「touch」の意味を理解しているかどうかが分かりますが、もし理解できていなければ「Touch my hand!」みたいに言いながらハイタッチして「touch」の概念を伝えてあげればいいです。

「〇〇」に入れる単語も、体のパーツを少しずつ覚えていけばいいです。

体のパーツは幼児向けの歌で大体理解できるようになるので、教える必要もないと思います。

このアウトプットの練習を親が日本語を通さないと意識することが大事なのではないかと考えます。

そのためにも親のバイリンガル教育に対する意識の習慣化と継続が必須です。

バイリンガルの子育てで失敗を回避したいなら向き合うべき6つのこと【後編】に続く

言いたいことが多くなってしまったので、一度ここで切って後編で別展開していこうと思います。

日本にいながら英語を教育するというのは難しいことで、アウトプットの環境づくりや継続で悩んでしまう方も少なくないと思います。

バイリンガルの子育てを通して、他にも様々な不安が頭をよぎると思います。

いっそのこと海外移住したいなんて考えも頭によぎります。

しかしながら、海外移住となると今度は働く親が言語の壁でハードルが高いと感じてしまいますよね。

後編では次のテーマでブログを書いていく予定です。

  • バイリンガルの子育てに関する失敗例
  • 筆者がバイリンガル教育で失敗しないために意識していること
  • バイリンガルの子育ては英語ができる親でなくても可能かどうか
  • バイリンガルの子育てで失敗を回避するためにできること(結論)

長くなってしまいましたが、お読みいただきありがとうございました。

記事の後編はこちらです。